Figma で複数アカウントを使い分ける — データはどこまで分離されるかを実測で確かめた

仕事用とクライアント用、会社用と個人用 — Figma を使い込むほど、複数アカウントを 1 台のマシンで使い分ける場面は増えていきます。Figma のデスクトップアプリは複数アカウントの同時ログインに対応していますが、気になるのはむしろその先です。「アカウントを切り替えたとき、データはどこまで分離されているのか」 — ファイルや課金はもちろん、プラグインが保存する設定や使用履歴まで含めると、公式ドキュメントには書かれていない領域が残ります。

この記事では、アカウントの追加・切り替え・削除といった基本操作に加えて、実際に 1 つのデスクトップアプリへ 2 つのアカウントを共存させ、データがどの層で分離され、どの層で共有されるのかを実測した結果をまとめます。

この記事で得られること

  • デスクトップアプリでのアカウント追加・切り替え・削除の手順
  • ログインがデフォルトブラウザ経由で行われる仕組みと、ブラウザ分離運用時の注意点
  • ファイル / 課金 / プラグインデータ / 使用履歴が どの層で分離されるかの実測結果
  • フリーランス・代理店・開発者それぞれに合った運用レシピ

関連記事も合わせてどうぞ

アカウント単位で同期される設定の代表例が UI 言語です。Figma 本体の言語設定については Figma の日本語化ガイド を参照してください。作業画面を広く使うパネル非表示のテクニックは Figma の UI を整える にまとまっています。

📝 はじめに — 複数アカウントが必要になる場面

複数アカウントの使い分けが必要になるのは、おおまかに次のパターンです。

  • 仕事用と個人用の分離: 会社のチームに紐づくアカウントと、個人の学習・サイドプロジェクト用アカウントを分けたい
  • クライアントごとのアカウント: 代理店・フリーランスで、クライアント組織から発行されたアカウントを行き来する
  • 開発用とビジネス用の分離: プラグインやテンプレートを公開している場合に、開発用アカウントと運営用アカウントを分けたい
  • 検証用アカウント: 本番データに影響を与えずに機能や共有設定を試したい

どのケースでも共通の関心事は「切り替えたときに、もう一方のアカウントに情報が漏れないか」です。結論を先に言うと、ファイルや課金などサーバ側のデータはアカウント単位で分離されます。一方で、ローカル側には 1 箇所だけアカウントを跨いで共有される層がありました。詳細は実測結果のセクションで説明します。

🔄 アカウントの追加と切り替えの基本

Figma デスクトップアプリは、最大 10 アカウントまで同時ログインでき、ログアウトせずに切り替えられます。

アカウントを追加する手順

  1. ファイルブラウザ左上の自分のアカウント名(アバター)をクリック
  2. Add account を選択
  3. ブラウザが開くので、追加したいアカウントでログイン
  4. アプリに戻ると、アカウントスイッチャーに追加したアカウントが並ぶ

切り替える手順

  1. 左上のアカウント名をクリック
  2. 一覧から切り替えたいアカウントを選ぶだけ — 再ログインは不要です

切り替えるとファイルブラウザの中身(チーム・プロジェクト・下書き)はそのアカウントのものに入れ替わります。

🌐 ログインはデフォルトブラウザ経由で行われる

デスクトップアプリはアプリ内にログイン画面を持っていません。ログイン(アカウント追加)を開始すると OS のデフォルトブラウザが開き、ブラウザ上で認証したセッションがアプリへ引き渡される流れになります。アプリ側でブラウザを選ぶことはできません。

これ自体は正常な仕様ですが、ブラウザ側でもアカウントを使い分けている場合に落とし穴になります。

ブラウザ分離運用をしている場合の注意

例えば「Chrome は仕事用アカウント、Edge は個人用アカウント」とブラウザで分離している場合、デフォルトブラウザが Chrome のままアプリに個人用アカウントを追加すると、ログインは Chrome 上で行われ、Chrome の figma.com セッションに個人用アカウントが混入します。回避するには、アカウント追加のあいだだけ OS のデフォルトブラウザを切り替えるのが安全です。追加が終わったら元に戻して問題ありません。

なお、ブラウザで完了したログインがアプリへうまく引き渡されず、数回やり直しになるケースも報告されています。失敗しても壊れているわけではないので、落ち着いて再試行してください。

🔬 どこまで分離される? — 3 層で見る実測結果

ここからが本題です。1 つの Windows デスクトップアプリに 2 つのアカウント(A / B)を共存させ、データの見え方を層ごとに確認しました(2026 年 8 月時点の実測)。

分離のされ方確認方法
サーバ側データ
(ファイル / チーム / 課金 / 保存済みリソース)
✅ アカウント単位で分離A で保存したプラグインが、B のブラウザ側 Community 一覧に現れないことを確認
プラグインのローカルデータ
(clientStorage)
✅ アカウント単位で分離A でプラグインの言語設定を変更 → B で同じプラグインを開いても設定が引き継がれないことを確認
プラグインの使用履歴
(メニューの Recents 表示)
⚠️ アプリ内で共有A で実行したプラグインが、B のプラグインメニューにも表示されることを確認

まとめると、「本体のデータはアカウント分離、ローカルの表示系に 1 箇所だけ滲みがある」という構図です。

公式ドキュメントには書かれていない挙動

Figma のプラグイン向けドキュメントは、プラグインのローカルデータ(clientStorage)について「ユーザーのローカルマシンに保存され、ユーザー間で同期されない」とまでしか説明しておらず、同一アプリ内に複数アカウントが共存する場合の分離単位は明記されていません。今回の実測で「同じマシン・同じアプリ内でも、アカウントごとに別々に保存される」ことが確認できました。

🧩 プラグインのデータと使用履歴の挙動

表の 2 行目と 3 行目は、どちらも「ローカルに保存される情報」ですが挙動が逆でした。それぞれもう少し詳しく見ておきます。

プラグインが保存する設定・データ(clientStorage)は、アカウントごとに独立

多くのプラグインは、言語設定や前回の入力値などをローカル(clientStorage という仕組み)に保存しています。実測では、アカウント A でプラグインの言語を日本語に設定してからアカウント B に切り替えても、B 側では初期状態(英語)のままでした。つまり同じマシン・同じアプリでも、プラグインのローカルデータはアカウントごとに別々の領域に保存されています。

利用者への実務的な意味は 2 つです。

  • プラグインの設定はアカウントを跨いで引き継がれない — アカウントごとに設定し直す必要がある
  • 逆に言えば、片方のアカウントでの利用状況がもう片方に漏れることはない

プラグインの使用履歴(Recents)は、アプリ内で共有される

一方で、プラグインメニューに表示される「最近使ったプラグイン」は挙動が異なりました。アカウント A で実行したプラグインが、切り替えたアカウント B のメニューにも表示されます。データの中身は渡っていませんが、「どのプラグインを使ったか」という履歴表示だけはアプリ単位で共有されるようです。

実害があるとすれば、画面共有や登壇のときにもう一方のアカウントで使ったプラグイン名が見えることくらいですが、厳密な分離を求める場合は覚えておきたい挙動です。これを消したい場合は、後述の OS ユーザー分離まで踏み込む必要があります。

🚪 アカウントの削除(ログアウト)と注意点

追加したアカウントをアプリから外すには、外したいアカウントに切り替えた状態でログアウトします。

  1. 左上のアカウントスイッチャーで、外したいアカウントに切り替える
  2. 同じメニューから Log out を選ぶ

ログアウトは現在アクティブなアカウントだけに作用し、そのアカウントがスイッチャーから消えます。他のアカウントはログインしたまま残り、10 枠の上限もこれで空きます。

ログアウトでローカルデータが消える可能性

ログアウトすると、そのアカウントのローカルキャッシュがクリアされるという報告があります。プラグインに保存した設定を保持したい場合、一時的な切り替え目的でのログアウトは避け、アカウントスイッチャーでの切り替えを使うのが安全です。

🛠️ プラグイン開発者向けの補足

複数アカウント環境は、プラグインを公開している開発者にとっても検証環境として重要です。1 つ、見落としやすい公式仕様があります。

公開済みプラグインの作成者アカウントには、課金状態が常に「支払い済み(PAID)」として返されます。 つまり開発者アカウントで自分の公開プラグインを開くと、実際には購入していなくても有料機能がすべて解放された状態で表示されます。これは Figma の Payments API の仕様です。

このため、無料ユーザーにどう見えるか(機能ロックが正しく効いているか)は、開発者アカウントでは原理的に確認できません。公開後の表示確認は必ず別アカウントで行う必要があります。今回検証したような複数アカウント共存環境を作っておくと、この確認がアカウント切り替えだけで完結するようになります。

🗂️ 用途別の運用レシピ

実測結果を踏まえると、分離の要求レベルに応じて次の 3 段階から選ぶのが現実的です。

運用分離レベル向いているケース
アプリ内のアカウント切り替えファイル・課金・プラグインデータが分離。使用履歴の表示のみ共有ほとんどのケースはこれで十分。切り替えが最速
ブラウザで分離
(アカウントごとに別ブラウザ)
ブラウザのプロファイル単位で分離デスクトップアプリを片方の用途専用にしたい場合の併用策。アプリへのアカウント追加時はデフォルトブラウザに注意(前述)
OS のユーザーアカウントを分けるアプリのローカルデータごと完全分離(使用履歴の共有も消える)画面共有の機会が多い、組織のセキュリティ要件が厳しい、など厳密な分離が必要な場合

❓ よくある質問

アカウントを切り替えると、プラグインの設定は引き継がれますか?

引き継がれません。実測のとおり、プラグインがローカルに保存する設定(言語設定など)はアカウントごとに独立しています。アカウントごとに初回設定が必要です。

有料プラグインのライセンスはアカウント間で共有されますか?

されません。Figma の決済(Payment Platform)による購入はアカウントに紐づくため、別アカウントでは別途購入が必要です。逆に言えば、購入済みアカウントであれば別のマシンでも同じライセンスが有効です。プラグインの課金形態そのものの比較は XD→Figma 変換プラグイン徹底比較 の価格セクションを参照してください。

複数アカウントの併用に料金はかかりますか?

かかりません。アカウントの作成・追加ログイン自体は無料です(各アカウントが属するチームのプランはそれぞれのアカウントの契約に従います)。

ブラウザ版とデスクトップアプリでデータは同期されますか?

ファイルなどサーバ側のデータは同じアカウントでログインしていれば同期されます。ただしプラグインのローカルデータはブラウザとアプリで別々に保存されるため、プラグインの設定は環境ごとに設定し直す必要があります。

🏁 まとめ

この記事のポイント

  1. デスクトップアプリは最大 10 アカウントの同時ログイン + 切り替えに対応
  2. ログインはデフォルトブラウザ経由 — ブラウザ分離運用中はアカウント追加時だけデフォルトブラウザを切り替えると綺麗に保てる
  3. ファイル・課金・プラグインデータはアカウント単位で分離(実測確認)
  4. 今回の実測範囲で唯一の滲みはプラグイン使用履歴の表示がアプリ内で共有されること
  5. 厳密な分離が必要なら OS ユーザー分離まで、通常はアプリ内切り替えで十分

「切り替えたら相手側に何が見えるのか」を一度実測で把握しておくと、仕事用・個人用・クライアント用のアカウントを安心して行き来できます。この記事が複数アカウント運用の設計の参考になれば幸いです。

🚀 XD → Figma 変換プラグイン — Pixel Fine Converter

本記事の実測にも使用した、日本語 UI 対応の XD 変換プラグイン。設定はアカウントごとに独立して保存されます。Free プランで 3 アートボードまで試せます

関連ページ